化物语(上)

文档

0.9

已售 0
1.8MB

数据标识:D17209197278863998

发布时间:2024/07/14

卖家暂未授权典枢平台对该文件进行数据验证,您可以向卖家

申请验证报告

数据描述

目录
Content
Chapter_1
Chapter_2
Chapter_3
Chapter_4
Chapter_5
Chapter_6
Chapter_7
Chapter_8
Chapter_9
Chapter_10
Chapter_11
Chapter_1
化物語(上)
西尾維新
化バケモノ物ガタリ語 上
西尾維新NISIOISIN
阿良々木《あららぎ》暦《こよみ》を目がけて空から降ってきた女の子?戦場《せんじょう》ヶ|原《はら》ひたぎには、およそ体重と呼べるようなものが、全くと言っていいほど、なかった--!?
台湾から現れた新人イラストレーター、〝光の魔術師?ことVOFANと新たにコンビを組み、あの西尾維新が満を持して放つ、これぞ現代の怪異! 怪異! 怪異!
青春に、おかしなことはつきもの[#「つきもの」に傍点]だ!
BOOK&BOX DESIGN VEIA
FONT DIRECTION
SHINICHIKONNO
(TOPPAN PRINTING CO.,LTD)
ILLUSTRTION
VOFAN
本文使用書体:FOT-筑紫明朝ProL
第一話 ひたぎクラブ
第二話 まよいマイマイ
第三話 するがモンキー
第一話 ひたぎクラブ
 001
 戦場《せんじょう》ヶ|原《はら》ひたぎは、クラスにおいて、いわゆる病弱な女の子という立ち位置を与えられている--当然のように体育の授業なんかには参加しないし、全校朝会や全校集会でさえ、貧血対策とやらで、一人だけ日陰で受けている。戦場ヶ原とは、一年、二年、そして今年の三年と、高校生活、ずっと同じクラスだけれど、僕はあいつが活発に動いているという絵をいまだかつて見たことが無い。保健室の常連で、かかりつけの病院に行くからという理由で、遅刻や早退、あるいは欠席を繰り返す。病院に住んでいるんじゃないかと、面白おかしく囁《ささや》かれるくらいに。
 しかし病弱とは言っても、そこに貧弱というイメージは皆無だ。線の細い、触れれば折れそうなたおやかな感じで、それはとても儚《はかな》げで、その所為《せい》だろう、男子の一部では、深窓の令嬢などと、話半分、冗談半分に囁かれたりもする。まことしやかに、といってもいい。確かにその言葉の雰囲気は、戦場ヶ原に相応《ふさわ》しいように、僕にも思われた。
 戦場ヶ原はいつも教室の隅の方で、一人、本を読んでいる。難しそうなハードカバーのときもあれば、読むことによって知的レベルが下がってしまいそうな表紙デザインのコミック本のときもある。どうやら、かなりの濫読《らんどく》派のようだった。文字であれば何でもいいのかもしれなかったし、そうではなく、そこには明確な基準があるのかもしれなかった。
 頭は相当いいようで、学年トップクラス。
 試験の後に張り出される順位表の、最初の十人の中に、戦場ヶ原ひたぎの名前が必ず記されている。それも全教科まんべんなく、だ。数学以外は赤点ばかりの僕なんかと較べるのもおこがましい話だが、きっと、脳味噌《のうみそ》の構造が、はなっから違うのだろう。
 友達はいないらしい。
 一人も、である。
 戦場ヶ原が、誰かと言葉を交わしている場面も、僕はいまだ見たことが無い--穿《うが》った目で見れば、いつだって本を読んでいる彼女は、その本を読むという行為によって、だから話しかけるなと、己《おのれ》の周囲に壁を作っているのかもしれない。それこそ、僕は二年と少し、戦場ヶ原とは机を並べているわけだけれど、その間、彼女とは恐らく一言だって口を利いたことはないと断言できる。できてしまう。戦場ヶ原の声といえば、授業中に教師に当てられて、決まり文句のように発する、か細い『わかりません』が、僕にとってのイコールなのだ(明らかに分かっている問題であろうがどうだろうが、戦場ヶ原は『わかりません』としか答えないのだ)。学校というのは不思議な空間で、友達のいない人間は友達のいない人間同士で一種のコミュニティ(あるいはコロニー)を形成するのが普通だが(実際、去年までの僕がそうだ)、戦場ヶ原はそのルールからも例外にいるようだった。勿論《もちろん》、かといって苛《いじ》めにあっているということでもない。ディープな意味でもライトな意味でも、戦場ヶ原が迫害されているとか、疎《うと》まれているとか、そういったことは、僕の見る限り、ない。いつだって戦場ヶ原は、そこにいるのが当たり前みたいな顔をして、教室の隅《すみ》で、本を読んでいるのだった。己の周囲に壁を作っているのだった。
 そこにいるのが当たり前で。
 ここにいないのが当たり前のように。
 まあ、だからといって、どうということもない。高校生活を三年間で測れば、一学年二百人として、一年生から三年生までで、先輩後輩同級生、教師までを全部含め、およそ千人の人間と、生活空間を共にするわけだが、一体その中の何人が、自分にとって意味のある人間なのだろうか、なんて考え始めたら、とても絶望的な答が出てしまうことは、誰だって違いないのだから。
 たとえ三年間クラスが同じなんて数奇な縁《えん》があったところで、それで一言も言葉を交わさない相手がいたところで、僕はそれを寂《さみ》しいとは思わない。それは、つまり、そういうことだったんだろうな、なんて、後になって回想するだけだ。一年後、高校を卒業して、そのとき僕がどうなっているかなんて分からないけれど、とにかくそのときにはもう、戦場ヶ原の顔なんて、思い出すこともないし--思い出すこともできないのだろう。
 それでいい。戦場ヶ原も、きっとそれでいいはずだ。戦場ヶ原に限らず、学校中のみんなきっと、それでいいはずなのだ。そんなことに対し、暗い感想を抱く方が、本来的に間違っているのである。
 そう思っていた。
 しかし。
 そんなある日のことだった。
 正確に言うなら、僕にとって地獄のようだった春休みの冗談が終了し、三年生になって、そして僕にとって悪夢のようだったゴールデンウィークの絵空事が明けたばかりの、五月八日のことだった。
 例によって遅刻気味に、僕が校舎の階段を駆け上っていると、丁度《ちょうど》踊《おど》り場《ば》のところで、空から女の子が降ってきた。
 それが、戦場ヶ原ひたぎだった。
 それも正確に言うなら、別に空から降ってきたわけではなく、階段を踏み外した戦場ヶ原が後ろ向きに倒れてきただけのことだったのだが--避《さ》けることもできたのだろうけれど、僕は、咄嗟《とっさ》に、戦場ヶ原の身体を、受け止めた。
 避けるよりは正しい判断だっただろう。
 いや、間違っていたのかもしれない。
 何故《なぜ》なら。
 咄嗟に受け止めた戦場ヶ原ひたぎの身体《からだ》が、とても--とてつもなく、軽かったからだ。洒落《しゃれ》にならないくらい、不思議なくらい、不気味《ぶきみ》なくらいに--軽かったからだ。
 ここにいないかのように。
 そう。
 戦場ヶ原には、およそ体重と呼べるようなものが、全くと言っていいほど、なかったのである。
 002
「戦場ヶ原さん?」
 僕の問いかけに、羽川《はねかわ》は首を傾《かし》げる。
「戦場ヶ原さんが、どうかしたの?」
「どうかっつうか--」
 僕は曖昧《あいまい》に言葉を濁《にご》した。
「--まあ、なんか、気になって」
「ふうん」
「ほら、何か、戦場ヶ原ひたぎだなんて、変わった名前で面白いじゃん」
「......戦場ヶ原って、地名|姓《せい》だよ?」
「あー、えっと、そうじゃなくて、僕が言っているのは、ほら、下の名前の方だから」
「戦場ヶ原さんの下の名前って、ひたぎ、でしょう? そんな変わってるかな......ひたぎって、確か、土木関係の用語じゃなかったっけ」
「お前は何でも知ってるな......」
「何でもは知らないわよ。知ってることだけ」
 羽川は納得しかねている風だったが、しかし特に追及《ついきゅう》してくるでもなく、「珍しいね、阿良々木《あららぎ》くんが、他人に興味を持つなんて」と言った。
 余計な世話だ、と僕は返した。
 羽川|翼《つばさ》。
 クラスの委員長である。
 これがまた、如何《いか》にも委員長といった風情《ふぜい》の女子で、きっちりとした三つ編みに眼鏡《めがね》をかけて、規律正しく折り目正しく、恐ろしく真面目《まじめ》で教師受けも良いという、今や漫画やアニメにおいてさえ絶滅|危惧《きぐ》種に指定されそうな存在なのである。今までの人生ずっと委員長をやってきて、きっと卒業した後でも、何らかの委員長であり続けるのではないかと、そう思わせる風格を持つ、つまるところ、委員長の中の委員長である。神に選ばれた委員長ではないかと、真実味たっぷりに噂《うわさ》する者もいるほどだ(僕だけど)。
 一年次、二年次は別のクラスで、この三年次で同じクラスになった。とはいえ、同じクラスになるその以前から、羽川の存在は聞いていた。当たり前だ、戦場ヶ原が学年トップクラスの成績ならば、羽川翼は学年トップの成績なのである。五教科六科目で六百点満点なんて嘘《うそ》みたいなことを平気でやってのけ、そう、これは今でも明確に記憶している、二年生一学期の期末テストで、保健体育及び芸術科目まで含めた全教科で、落としたのは日本史の穴埋《あなう》め問題一問のみという、とんでもなく化物じみた成果を達成したこともある。そんな有名人、知りたくなくとも勝手に聞こえてくるってものだ。
 そして。
 たちの悪いことに、いやいいことなのだろうけれど、とにかく迷惑この上ないことに、羽川は、とても面倒見のいい、善良な人間であったのだった。そしてこれは素直にたちの悪いことに、とても思い込みの激しい人間でもあった。過度に真面目な人間にありがちなように、こうと決めたら挺子《てこ》でも動かない。春休みに、既に羽川とは、ちょっとした顔合わせが済んでいたのだが、明けてクラス替え、同じクラスになったと知るや否《いな》や、彼女は、「きみを更生させてみせます」と、僕に宣言したのである。
 別に不良でもなければさして問題児でもない、クラスにおける置物のような存在だと、己自身を評価していた僕にとって、彼女のその宣言は正に青天の霹靂《へきれき》だったが、いくら説得しても羽川の妄想じみた思い込みはとどまることを知らず、あれよあれよと僕はクラスの副委員長に任命され、そして現在、五月八日の放課後、六月半ばに行われる予定の文化祭の計画を、教室に残って羽川と二人、練っているというわけだった。
「文化祭っていっても、私達、もう三年生だからね。さしてすることもないんだけれど。受験勉強の方が大事だし」
 羽川は言う。
 当然のように文化祭よりも受験勉強を優先させて考える辺り、委員長の中の委員長である。
「漠然《ばくぜん》としたアンケートじゃ意見がばらけちゃって時間がもったいないから、あらかじめ私達で候補《こうほ》を絞って、その中から、みんなの投票で決定するっていうので、いいかな?」
「いいんじゃないのか? 一見民主主義っぽくて」
「相変わらず嫌な言い方するよね、阿良々木くんは。ひねてるっていうか」
「ひねてなんかない。やめろ、人をむやみにトンガリ呼ばわりするな」
「参考までに、阿良々木くんは、去年|一昨年《おととし》、文化祭の出し物、何だった?」
「お化け屋敷と、喫茶《きっさ》店」
「定番だね。定番過ぎる。平凡といってもいいかも」
「まあね」
「凡俗といってもいいかも」
「そこまでは言うな」
「あはは」
「大体--平凡な方が、でも、この場合はよくないか? お客さんだけじゃなくて、こっちも楽しまなくちゃならねえってんだから......ん。そう言えば、戦場ヶ原は--文化祭にも、参加してなかったな」
 去年も--一昨年もだ。
 いや、文化祭だけではない。およそ行事と呼べるもの--通常授業以外のものには、全くといっていいほど、戦場ヶ原は参加していない。体育祭は勿論、修学旅行にも、野外授業にも、社会科見学にも、何にも、参加していない。激しい活動は医者から禁じられている--とか、なんとかで。今から考えてみればおかしな話である。激しい運動[#「運動」に傍点]とか言うのならまだしも、活動[#「活動」に傍点]を禁じられているという、その不自然な物言い--
 しかし、もしも--
 もしもあれ[#「あれ」に傍点]が、僕の錯覚でないとしたら。
 戦場ヶ原に、体重がない[#「ない」に傍点]のだとしたら。
 通常の授業以外の、そう、不特定多数の人間と、ともすれば身体が接触する機会のある、体育の授業などは--絶対に参加するわけにはいかない、対象だろう。
「そんなに気になるの? 戦場ヶ原さんのこと」
「そういうわけでもないんだけど--」
「病弱な女の子、男子は好きだもんねー。あー、やだやだ。汚《けが》らわしい汚らわしい」
 からかうようにいう羽川。
 割合珍しいテンションだった。
「病弱、ねえ」
 病弱というなら--病弱だろう。
 いや、しかし、あれは病気なのだろうか?
 病気でいいのだろうか[#「病気でいいのだろうか」に傍点]?
 身体が弱くて、それで必然的に身体が軽くなるというのは、分かりやすい説明だが--既にあれ[#「あれ」に傍点]は、そういったレベル[#「そういったレベル」に傍点]での話ではなかった。
 階段の、ほとんど一番上から、踊り場まで、細身の女子とはいえ、一人の人間が落下したのだ。通常ならば、受け止めた方でさえ、結構な怪我《けが》をしかねないようなシチュエーションである。
 なのに--衝撃はほとんどなかった。
「でも、戦場ヶ原さんのことなら、阿良々木くんの方がよく知ってるんじゃないのかな? 私なんかに訊《き》くよりさ。なんったって、三年連続で同じクラスだっていうんだから」
「そう言われりゃ、確かにそうなんだが--女の子の事情は、女の子の方が知ってるかと思って」
「事情って......」
 羽川は苦笑した。
「女の子に事情なんてものがあるとしたら、それこそおいそれと教えてあげるわけにゃいかないでしょうが、男の子に」
「そりゃそうだ」
 当たり前だった。
「だからまあ、クラスの副委員長が、副委員長として、クラスの委員長に質問しているんだと思ってくれ。戦場ヶ原って、どんな奴なんだ?」
「そうくるか」
 羽川は、話をしながらも進めていた走り書きを止め(お化け屋敷、喫茶店を筆頭に、クラスの出し物の候補を、書いては消し書いては消ししていた)、ふうむ、と手を束《つか》ねた。
「戦場ヶ原、なんて、一見危なっかしい感じの苗字《みょうじ》だけど、まあ、何の問題もない、優等生だよ。頭いいし、掃除とか、サボらないし」
「だろうな。それくらい、僕にもわかる。僕じゃわからないことが、聞きたいんだ」
「でも、同じクラスになって、まだ、丁度一ヵ月くらいだしね。わかんないってのが、やっぱりかな。ゴールデンウィーク、挟んじゃってるし」
「ゴールデンウィークね」
「ん? ゴールデンウィークがどうかした?」
「どうもしない。続けて」
「ああ......そうだね。戦場ヶ原さん、言葉数も多い方じゃないし--友達も、全然、いないみたい。色々、声かけてはみてるけど、彼女の方から、壁作っちゃってる感じで--」
「..................」
 さすが、面倒見のいいことだ。
 無論、それを見込んでの、質問だったのだが。
「あれは--本当に難しいわ」
 羽川は、言った。
 重い響さで。
「やっぱり病気の所為なのかな。中学生のときは、もっと元気|一杯《いっぱい》で、明るい子だったんだけどね」
「......中学生のときって--羽川、戦場ヶ原と同じ中学だったのか?」
「え
data icon
化物语(上)
0.9
已售 0
1.8MB
申请报告